第六章 ロマンスの入口

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「・・・君が、欲しい。」 「.・・・んっ」 ルイの甘い囁きが、私の官能に語りかけてくるようで、じわじわと身体中に熱が広がっていく。 この熱に、飲み込まれてしまいたい。 彼の愛に、溺れてしまいたい。 「・・・わ、私も──」 そう口を開きかけた時、ルイのスーツの内ポケットから、振動音が響いた。 「・・・なんて、間の悪い・・・」 ルイは、ポケットから電話を取り出すと、額に手を付いて、大げさに落胆して見せ、ほんの少し照れ笑いをして通話ボタンを押した。 「もしもし?」 どことなく不機嫌そうに言いながら、スピーカーに切り替えた。 『おいっ!何してる!?あの子は見つかったのか?』 聞き覚えのある、つっけんどんな声が、早口でまくし立てるように話している。 「あぁ、見つかったよ。今とてもいいところだったのに、誰かさんのせいでダメになっちゃったとこ。」 ねっ?と、言わんばかりに笑いかけられると、とてつもなく恥ずかしくなって、慌てて開いた胸元を押さえた。 『バカ言ってんじゃねぇよ。こっちは誰かさんのせいで大変な状況なんだよっ!見つかったんなら今からそっちへ向かう!十分で行く!その間に準備を済ませておけよ!』 相手はそれだけ伝えるとすぐに電話を切った。 「りょーかい。」 通話が終了した電話に小さく呟くと、ルイはすぐにそれを再び内ポケットに収め、もう一度、私を強く抱きしめた。
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