第六章 ロマンスの入口

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「さぁ、これから君に魔法をかけるよ。」 ルイは立ち上がり、窓を開け広げた。 割れたガラスの欠片が、キラキラと光の粒を散らしながら地面に落ちていく。 「ちょっと待ってて。」 窓から身を乗り出すと、窓枠のすぐ横にある屋根に続く梯子(はしご)を登り始めた。 「ルイっ!危ないわっ!どこへ行くの?」 「煙突に用があるんだ。すぐ戻るから。」 外はもう真っ暗だ。小高い丘の上のこの屋敷の辺には街灯も少ない。 先ほどまで煌々と輝いていた月も、今は流れ雲に隠れてしまっている。 足なんか滑らせたら大変・・・ 「そうだわ!」 私は、棚の上から、お父様が大切に使っていたランプと、一緒にしまっておいたマッチを取った。 「今日も、お願いね。」 マッチを擦って、ランプに火を灯す。 このランプには、いつも本当に助けられてばっかり。 涙に濡れたつらい夜に、慰めの『シンデレラ』を読めたのも、身を切るような冬の寒さを、温めてくれたのもこの灯りだった。 あのドレスと庭のバラがお母様なら、このランプはお父様のような存在だった。 「どうか、少しでも足元が照らせるといいけど・・・」 私は窓から身を乗り出して、高々とランプを(かか)げた。
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