1410人が本棚に入れています
本棚に追加
「さぁ、これから君に魔法をかけるよ。」
ルイは立ち上がり、窓を開け広げた。
割れたガラスの欠片が、キラキラと光の粒を散らしながら地面に落ちていく。
「ちょっと待ってて。」
窓から身を乗り出すと、窓枠のすぐ横にある屋根に続く梯子を登り始めた。
「ルイっ!危ないわっ!どこへ行くの?」
「煙突に用があるんだ。すぐ戻るから。」
外はもう真っ暗だ。小高い丘の上のこの屋敷の辺には街灯も少ない。
先ほどまで煌々と輝いていた月も、今は流れ雲に隠れてしまっている。
足なんか滑らせたら大変・・・
「そうだわ!」
私は、棚の上から、お父様が大切に使っていたランプと、一緒にしまっておいたマッチを取った。
「今日も、お願いね。」
マッチを擦って、ランプに火を灯す。
このランプには、いつも本当に助けられてばっかり。
涙に濡れたつらい夜に、慰めの『シンデレラ』を読めたのも、身を切るような冬の寒さを、温めてくれたのもこの灯りだった。
あのドレスと庭のバラがお母様なら、このランプはお父様のような存在だった。
「どうか、少しでも足元が照らせるといいけど・・・」
私は窓から身を乗り出して、高々とランプを掲げた。
最初のコメントを投稿しよう!