第六章 ロマンスの入口

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「ありがとう。セレナのお陰で降りるのが楽だったよ!」 ストっ。っと、軽い音を響かせて、ルイが再び窓から部屋へ戻ってきた。 その肩には大きな白い布袋が掛けられている。 「それは何?」 「言ったろ?君に魔法をかけるのさ。」 ルイは私の頭をひと撫ですると、袋の中身をベッドの上に取り出した。 「これを・・・私に?」 中から出てきたのは、オールドローズ色の美しいドレスだった。 まるで、お母様のドレスみたい。 「あのドレス・・・お母様の形見だったんだね。」 ドレスに魅入っていたら、後ろからルイに包み込まれた。 「見ていたの?」 「あの時、君を羽交い締めにしていたのは、僕なんだよ。」 「えっ?」 なんてこと! 全く気が付かなかった・・・。 「本当に、酷いことをする人たちだ・・・。守れなくて、ごめん。」 私を抱きしめるルイの腕に力が籠る。 「こんなことになるなら、もっと無理矢理にでも、君にあの靴を渡させるべきだった。」
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