第六章 ロマンスの入口

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「とても、よく似合っている。これは僕の父が、君のお母様に渡したかったものだ。・・・留学先の天使に惚れたのは、君のお父様だけじゃないんだよ?」 頭の上のものに手を触れる。 ・・・これは・・・ティアラ?所々に感じるおうとつは、多分宝石。だけど、全体的に滑らかなツルツルした手触りはまるでガラスのよう・・・。ガラス・・・?ガラスの、ティアラ? 「どうしてこれを、あなたのお父様が?・・・どうして?」 「簡単さ、僕の父は、君のお母様の王子様になりたかった。だけど、靴のサイズが分からないからティアラにしたんだ。」 ルイは揶揄(からか)いを交えて笑った。 「違うわ。そうじゃなくて、どうして、あなたのお父様が私のお母様を?」 過去のお母様の秘密に触れるようで、ついつい語気が強まってしまう。 「言っただろ?運命なんだ。・・・だけど、父にはそれが出来なかった。魔女の呪いがそれを許さなかったんだ。」 「魔女の、呪い?」 悲しげに伏せられているルイの瞳を見れば、決してそれが冗談じゃないことはわかる。 だけど・・・運命ってなに?・・・魔女の呪いってどういうこと・・・? 私は、何も知らない。 ルイは、呆然と立ち尽くしている私のシャツを、静かに下ろした。 「きゃっ!」 「ごめん。とにかく今は話している時間が無い!さぁ、これを着て!」 肩越しに、ドレスが手渡され、私はとにかく肌を隠したい一心で、急いでそれに袖を通した。
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