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「あぁ...トレナ。私の可愛い娘...。さぁ、話してごらんなさい。あなたの大切な靴は何処にあるの?」
「...靴...?」
何のこと?
何の話をしているの?
『靴』と聞いて、私に思い当たることなんか───・・・
まさかっ!?
考えが、顔に出てしまったみたい。
私があの靴の存在を思い出した瞬間に、お母様に顎を掴まれた。
「さぁ...教えて頂戴。」
「だ...、だめっ...!あれだけはっ!絶対にだめっ!!」
私は三人を振りほどいて一目散に物置部屋へ走った。
「っ...チッ!!...待ちなさいっ!ほら、あなたたちも追いなさい!!」
「はいっ!お母様!!」
すぐ後ろを、二人のお姉様たちが付いてくる。
まるで悪魔に魂を売ったかのような二人の目のギラつきを見ると、もっと速く走りたいのに、恐怖で足がもつれて転びそうになってしまう。
見てはダメ!
捕まってしまったら、本当に私は『いなかったこと』にされてしまう!
部屋の扉が見えた。
私は急いでノブを回すと、隙間に滑り込むように部屋に飛び込み、鍵を閉めた。
ドアの前に古い机や椅子を積み上げて、即席のバリケードを作ると、遂にその場に座り込んでしまった。
──ドンっ!ドンっ!!
「開けなさい!トレナ!!」
「私たちから逃げられると思ってるのっ!?」
ドアの向こうから、お姉様たちの怒号が聞こえる。
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