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低い声に脅されて、私は横目でこめかみに当てられているものを見た。
黒い、鉄の塊は、間違いなく本物だと思う...。
でも.....
「それはできないわ。」
「なぜだっ!」
私にピストルを押し当てている男が小さく舌打ちした。
きっと、私が靴を渡さないと報酬が入らないのね。
「あれは私の大切な物なの!あれは...あの靴は...私の希望なのよ...。」
これまであの靴に、あの日のルイの言葉に、どれだけ支えられてきたか...。
こんな酷い生活を強いられても『私もいつかシンデレラみたいに...』と夢を見ていられたのは、あの靴と、ルイの存在のおかげだったのに...。
泣き崩れる私の背後で、ガラガラとワインの木箱で作ったベッドが崩れる音がした。
「あった!!あったわぁ!!」
「ホントだぁ!お姉様さっすがぁ~!!」
遂に、見付けられてしまった。
「あぁ良かった!髪を染めて、カラーコンタクトを入れて、顔まで弄った上に、特殊メイクまでしたのに、無かったらどうしようかと思ったわぁ!そうでないと、誰がノロマのトレナールみたいな姿になりたいもんですかぁ!」
ゲラゲラと、優利愛お姉様の高笑いが響いた。
「...ちっ!」
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