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それを見て、自分の手柄にならないのが悔しいのか、男は小さく舌打ちした。
「...離してっ!」
私は必死にもがいた。
あの中には、靴の他にも宝物が詰まっている。
それらだけでも守らないと!
「ダメだっ!」
でも、どんなにもがいても、男の人の力には適わない。
悔しい...。
悲しい...。
私はただ目の前で宝物を荒らされるのを見ているしかできない。
涙で滲む視界で、優しいオールドローズがふわりと揺れた。
だめっ!それに触らないで!!
「きゃあ!何このふっる~いドレス~!大昔のドレスみたいでダサいわね~!」
莉理愛お姉様が、ドレスを高々と持ち上げて上から下まで穴を探すような目で見ている。
「やめて!触らないで!!それはお母様の形見なの!」
「え?そうなの?それじゃあ.....」
お姉様は、ずいっと私の目の前にドレスを差し出してきた。
私はそれに反射的に手を伸ばした。
だけど、手が届く寸前に、またすぐ腕を引っ込められてしまった。
「キャハハハハっ!!返すわけないじゃな~い!!」
「お辞めなさい、莉理愛。」
品のない笑い方を窘めるように、百合子様がお姉様を睨んだ。
「ごめんなさい。お母様。」
シュンと、急にしおらしくなった莉理愛お姉様は百合子様に頭を下げた。
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