第四章 偽りのプリンセス

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そう言って、また下品に笑った男の手に握られているナイフが、シャツのボタンを一つ、一つと切り落としていく。 ボタンが床に転がっていくたびに、私の腹部から上が空気に晒され、そのどうしようもないほどの羞恥にひたすら怯えるしか出来ない。 「いやっ!...こんなの絶対にいやっ!!」 「ほら、残り一つになったぞ。」 「いやっ!」 もうだめ...。 きっとこのまま私は────・・・ 途端に、瑠衣さんの、いや、ルイの笑顔が思い浮かんで、私の胸を締め付けた。 ──ルイ...ごめんなさい。...あなたは私を探していてくれたのに。 あの時、気付けなかった私を許して...。 あなたを信じることが出来なかった私を許して...。 あなた以外の男に、貞操を奪われることを...どうか許して... 私の懺悔はあなたには届かないと思うけど、こんな風になってまで、あなたを待ち望んでしまう私を、期待してしまう私を許して。 今あなたのもとへ向かったのは、本物の私じゃないと、どうか気付いて! 「お願いっ!!」 最後のボタンが、プチっと、小さな悲鳴を上げて転がった。 私の願いが虚しく響く冷たい部屋の中で、私はただ転がり続けるボタンをぼんやりと眺めていた。
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