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そう言って、また下品に笑った男の手に握られているナイフが、シャツのボタンを一つ、一つと切り落としていく。
ボタンが床に転がっていくたびに、私の腹部から上が空気に晒され、そのどうしようもないほどの羞恥にひたすら怯えるしか出来ない。
「いやっ!...こんなの絶対にいやっ!!」
「ほら、残り一つになったぞ。」
「いやっ!」
もうだめ...。
きっとこのまま私は────・・・
途端に、瑠衣さんの、いや、ルイの笑顔が思い浮かんで、私の胸を締め付けた。
──ルイ...ごめんなさい。...あなたは私を探していてくれたのに。
あの時、気付けなかった私を許して...。
あなたを信じることが出来なかった私を許して...。
あなた以外の男に、貞操を奪われることを...どうか許して...
私の懺悔はあなたには届かないと思うけど、こんな風になってまで、あなたを待ち望んでしまう私を、期待してしまう私を許して。
今あなたのもとへ向かったのは、本物の私じゃないと、どうか気付いて!
「お願いっ!!」
最後のボタンが、プチっと、小さな悲鳴を上げて転がった。
私の願いが虚しく響く冷たい部屋の中で、私はただ転がり続けるボタンをぼんやりと眺めていた。
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