第五章 パーティの風景

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「社長、会場の準備が整いましたので、そろそろお越しください。」 部屋の窓辺に立って、夕焼けに染まる街の景色を眺めていたら、後ろから声を掛けられた。 実際のところは、まだ動きが見られないあの三角屋根の洋館を眺めていたいが、そうもいかないだろう。 「ん?ああ、もうそんな時間か。」 とりあえず、適当に返事を返しながら、まだ視線はあの洋館に貼り付けてある。 「社長、そろそろ...。」 第二秘書の丸山は時間管理に()けている。 時には秒刻みで仕事をこなさなくてはならないこの業界のなかで、彼ほどスケジュール管理を完璧にこなせる男はいないだろう。 その彼が、メタリックの眼鏡の(ふち)を指で持ち上げながら催促している。 恐らく、もうタイムオーバーなのだろう。 仕方なく、窓枠から手を離したとき、内ポケットに入れていた携帯電話が小さく震えた。 電話はツーコールですぐに切られた。 なるほど...。 これはGOサインだ。 「あぁ、わかったよ。行こうか。」 少し勿体ぶったようにゆっくりと振り返り、机の上の眼鏡を取った。 「おや?今日は眼鏡ですか?」 「あぁ、ちょっとコンタクトの具合が良くなくてね。」 この黒縁メガネは嫌いじゃない。 軽い仮装でもするように、別人になるスイッチのように感じる。 「じゃあ、参りましょうか。皆さん首を長くしてお待ちです。」 そう言ってドアを開いてくれた丸山の後に続いて、ゆっくりと会場へ向けて足を踏み出した。
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