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会場といっても、この別荘内に設けてあるイベントホールだ。
しかしながら、そこそこの広さはある。
恐らくざっと百名くらいは収容できるだろうここは、もうたくさんの、名のある企業のご令嬢たちで溢れかえっていた。
気取らない立食パーティにしたつもりだったが、女性たちはみなヨーロッパ貴族並のドレスを着込んでいる。
そのせいか、豪華なシャンデリアと、部屋に敷き詰められたエンジ色の絨毯、そして取り揃えられた西洋アンティークのソファやテーブルの雰囲気も相まって、まるで中世ヨーロッパの社交界さながらの風景が広がっている。
「やぁ、如月社長!しばらくだね!」
「あぁ、これは大原社長。ご無沙汰しております。」
会場に踏み込むと同時に、まず声を掛けて来たのは大手広告代理店、代表取締役社長の大原祐三だった。
「この度はご招待に預かれて光栄だよ。このパーティはうちの娘のために開いてくれたのかと思ってしまう。」
そう言って大口を開けて笑うこの男が、どうしても好きになれない。
会社の利益を得るためならば手段を選ばないことでも有名であるこの男は、きっと多くのところで恨みを買っていることだろう。
隣で俯いている娘の顔は、どことなく曇って見える。
きっと、心に決めた相手がいるにも関わらず、無理やり連れてこられたに違いない。
「えぇ、大原社長のところのお嬢様も大変素敵ですが、私などには勿体ないほどです。」
そう言って彼女に笑顔を向ければ、パッと顔を上げ、笑顔を咲かせてくれた。
親の都合で大切な娘を犠牲にするなど、やはりこの男は好きになれない。
「今日はどうか、楽しんでいってくださいね。」
これ以上の長話は無用だと、軽く牽制してその場を離れた。
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