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...そうだ、考えろ...。なぜ、彼女がここにいるのかを...。
「あの...瑠衣さん?」
遠慮がちに、彼女が顔を覗き込んできた。
「...ん?何でしょうか?」
「お具合でも、お悪いのですか?」
随分と余所余所しい...。
ミセス・大道寺にそうしろと言われたからなのか...。
それとも、二人の姉に気を遣ってのことなのか...。
.....姉.....二人.....?
急に違和感の正体が、尻尾を現した気がした。
「あの...瑠衣さん?」
黙り込んでいると、再び彼女が声を掛けてきた。
その手には、ハンカチが握られている。
「お顔の色が優れない様です…。それに、汗も...。よかったらこれ、お使いください。」
「いえ、大丈夫です。どうか、お気遣いなく。」
やはり、思った通りだ。
このネイルには、見覚えがある。
モノトーンデザインに無数に散りばめられたストーンと、有名ブランドのロゴをあしらったこのネイルが、如何にも権力を振りかざしているようで、低劣な印象を抱いた。
「...ふふ...くくくっ...。」
思わず笑いが零れた。
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