第六章 ロマンスの入口

3/21
1408人が本棚に入れています
本棚に追加
/201ページ
「ルイっ!!助けてーっ!!!」 私が最後の力を振り絞るように叫ぶと、その気持ち悪い手が、私の胸の膨らみに触れようとして止まった。 「...動くな。」 男の背後に、影が見える。 舞踏会の仮面の下に光る、サファイアブルーの輝き...。 月の光に照らされた黒髪は、まるでブラックダイヤモンドのよう...。 「...ル──っ!」 彼が口元に人差し指を立てている。 今すぐにでも、その胸に飛び込みたいその人の名を呼ぶのを、寸でのところで堪えた。 「...お前は...?」 男が振り返ることもできずに尋ねた。 後頭部に当てられた金属の冷たい感触に、顔は恐怖に引き攣り、声も情けないくらいに震えている。 「それはお前の知らなくていいことさ。さぁ、撃たれたく無ければ大人しく両手を上げろ。」 男は促されるままに両手を顔の横に上げた。 「上出来だ。じゃあ、そのままその手で両目を覆うんだ。」 「なぜっ!?」 ルイの凍りつくような冷たい声に、男はガタガタと震えだした。 「いいから、早くしろ。」 動作を渋る男の後頭部に、ルイはさらに強くピストルを押し付けた。
/201ページ

最初のコメントを投稿しよう!