第六章 ロマンスの入口

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「ひぃっ!...わっ...分かったよ!...ほらっ!これでいいだろ?俺は、あんたの顔も見てねぇ!だから逃がしてくれよ!!それに、俺はあの女に雇われたに過ぎねぇんだ!!頼むっ!助けてくれよ!!」 さっきまで私を襲おうとしていたのが嘘みたいに、男は泣きながら命乞いをしている。 こんな男に組み敷かれていたと思うと、ますます自分が情けなくなる。 「あの女とは、だれだ?答えろ!」 「この館の主!大道寺百合子だ!!さぁ、言ったぞっ!!これでいいだろう?本当に、俺はあんたの顔も見てねぇから!それにこの女にもまだ手は出してねぇっ!だから頼む!頼むから命だけはっ!!」 「そうだな.....。」 ルイは口元に軽く弧を描くと、男の後頭部からピストルを下ろした。 「...はぁ...よかった...。」 カチャリ...と冷たい音を立てたピストルが、後頭部から離れると、男は安堵したように盛大なため息をついた。 でも、直ぐにその大きく開いた口に、ピストルが捩じ込まれ、身体を石みたいに硬直させた。
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