運命

4/12
前へ
/167ページ
次へ
 永凛は真桜と共に、離れへ向かった。真桜は、行李から出した着物を永凛に当て、試すすがめつする。 「よく似合う。ただ、大きさが合わないから、詰めねばな」 「この衣装って」 「私が婚姻式で使ったものだ」 「そんなの、借りていいんですか?」 「当たり前だろう。私たちは家族だ」  家族。その言葉に、永凛はくすぐったい気持ちになった。着物にまち針を刺す真桜に、尋ねてみる。 「なあ、真桜さま。真桜さまは、乳って出る?」 「は?」  彼が怪訝な顔でこちらを向いた。 「俺、すごい張っちゃって」 「いや……私は、真蒼を産んでしばらく経つから」  真桜は動揺しつつ答える。永凛は、じりじり真桜に近づいた。 「ちょっと見せて」 「は? く、来るな」  彼は怯えた様子で後ずさる。その時、離れの戸が開いた。 「何してんだ?」  真蒼を抱いた蒼華が、きょとんとした顔で立っていた。 「蒼華」  真桜は慌てて蒼華に駆け寄り、背後に隠れる。 「どーしたんだよ」 「真桜さまに、乳が張らないか聞いてたんだ」 「ああ、乳な。張ってるときは、吸ってっておねだりしてくるぜ」 「蒼華!」  真桜が真っ赤になって蒼華の肩をたたいた。 「真蒼の前で変なことを言うな、馬鹿者!」  真蒼はわかっていない様子で、蒼華を見上げる。 「乳って牛さんの?」     
/167ページ

最初のコメントを投稿しよう!

549人が本棚に入れています
本棚に追加