陰陽

3/4
前へ
/167ページ
次へ
清明(せいめい)」  いきなり背後で声が聞こえ、永凛はびくりとした。 「うおっ」  振り向いたら、蒼華が立っている。彼は蒼白になっていた。 「おい、清明。何してるんだ」  そう言って、死体を抱いた男に近づいていく。清明と呼ばれた男が、彼を見た。無表情で答える。 「器を探す日課ですが、なにか」 「まだそんなこと言ってんのか。あれから何年経ったと思ってる」 「さあ」 「18年だぞ。いくらなんでも無茶だ」 「叔父上には関係ないでしょう」 「いやあるし。緋家当主が死体で遊んでるとか笑えねえよ」 「遊んでいるわけではない。器を探している」 「だあっ、もう埒あかねえ!」  蒼華が叫んだ。清明がふっ、とこちらに目をやる。 「それは?」 「ああ、緋家の名前を騙って商売してたんだよ」  清明はじっとこちらを見た。 「汚い顔だ。どこかで見た」  誰が汚いだ。永凛はむっとする。清明はしばらく考えこみ、 「ああ、スリか」  とつぶやく。 「ふん、そっちは追い剥ぎじゃねえか」 「なにか言ったか」 「なんにも」  というか、先ほど蒼華がとんでもないことを言った気がした。 「緋家の当主って」 「ああ、コイツは緋家当主、燕清明だ」 「燕? 緋じゃないのかよ」     
/167ページ

最初のコメントを投稿しよう!

549人が本棚に入れています
本棚に追加