凌辱

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凌辱

  清明に引きずられて、永凛は暴れる。 「離せ、離せよっ」  そうがっしりしているようには見えはないのに、蒼華と同じくらいに力が強い。彼は永凛を木に押し付け、低い声を出す。 「なぜリンエイさまの名をかたった。本当の名は?」 「だから、永凛だ。苗字はない」 「嘘をつくな」 「ついてねえよ、大体、リンエイなんて知らねえし」  永凛は吐き捨てた。 「男なのに妊娠する気色の悪いやつだったんだろ。そんなやつ知るかよ」  その直後、すうっと空気が変わった気がする。永凛は息を呑み、恐る恐る振り返る。清明は無表情でこちらを見ていた。冷たい目に、ひやりと背筋が震えた。 「なるほど……生意気だ」 「な、なんだよ、本当のことだろ」 「確かに、仮におまえが妊娠したら、気色が悪いかもしれないな」  当たり前だ。 「おまえを犯したい雄などいないだろうし」 「え、ひっ」  清明が下履きをずりおろしたので、永凛はもがいた。 「何すんだ!」 「汚い肌だ。リンエイさまの足元にも及ばない」  その声には、かすかな欲がにじんでいた。リンエイさまって──男だろう。こいつまさか。清明の手は、躊躇なく尻を這う。背筋がぞわぞわした。     
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