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浴場の中から、身体を洗う清明をにらみつける。
艶やかな髪、傷一つない白磁のような肌。うっすらついた無駄のない筋肉。そこらの町娘ならば一瞬で虜にしてしまえそうだが、その実は会ったばかりの相手を犯す変態だ。
「……」
清明は首筋をぬぐい、こちらを見た。
「なんだ? その目は」
「変態。死ね」
「よがっていたくせに」
嗤われて、永凛は歯噛みした。
「あんなの絶対おかしいんだ。なんか変な薬盛ったんだろ」
「言ったはずだ。おまえはオメガ。何もしなくても勝手に濡れて、男を誘う」
「人をど淫乱みたいに言うんじゃねえ」
「間違いではあるまい。オメガが淫乱なのは発情期だけだがな」
清明はそう言って、湯をかぶった。そうして、ふるりと艶のある髪を振る。こちらに視線を向け、
「なら聞くが、おまえは女に惹かれたことがあるか?」
永凛は口ごもった。
「……それは、あまり、知り合いがいねえし」
「では、男に言い寄られたことは」
いくつかの場面が思い浮かび、永凛は眉をしかめた。
「どうでもいいだろ、んなこと」
清明がこちらにやってきたので、慌てて浴槽の隅へと向かう。その様子を見て、清明が目を細めた。
「何を怯えている。もう二度もしたというのに」
「両方無理やりだろーが。ばかじゃねえの」
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