刻印

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「三回目をしてほしいか?」  永凛は、ばしゃんとお湯を跳ねさせた。 「そんなわけねえだろ! 二回もやったんだから、魔除けの件はもうチャラにしろよ!」 「チャラ? リンエイさまを愚弄したことは許されない。一生かけて償え」 「そんな重い罪かよッ……」  清明は、当たり前だという顔をしている。 「わかったよ、謝る。ドーモすいません」  永凛はぺこ、と頭を下げた。清明はじっとこちらを見ている。 「素直なのか生意気なのかどっちだ?」 「普通だよ。金持ちにはわからねえかもしんねえけど、貧乏人は生きるために、嫌いな奴の靴舐めんだよ」  今まで守ってきた貞操まで奪われたのだ。もう失うものなどない。永凛は頭をあげ、 「で、もう帰っていいわけ」  と尋ねた。清明はかぶりを振る。 「はあ? なんでだよ! 謝ったじゃねえか」 「おまえには私の子を産んでもらう」 「は?」 (何を言っているんだ、こいつは) 「緋家には跡継ぎがいない。凛映さまは子を産む前に亡くなったからな」 「はあ」  そうなのか。 「私には側室が数人いる。精々仲良くしろ」 「はあ!?」  要するに愛人になれということか。 「ふざけんな。俺は帰る。子供たちが待ってんだ」 「子供? おまえ、番いがいるのか」     
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