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「いねーよ。他人だ。大体、俺はオメガとかいうのじゃないし」
じゃあな。そう言って出口へ向かうと、腕を掴まれた。清明の瞳が、じっとこちらを見下ろしている。
「なんだよ。やんのか」
勝てるとは思えないが、永凛にはまだ守らねばならないものがある。あと何回犯されようが、家に帰ってやると思っていた。
「他人の子を世話するのか?」
「悪いかバーカ。人の勝手だろが」
睨みつけていたら、清明がふっ、と表情を変えた。
「致し方ない」
「な、あっ」
清明が、身体を寄せてくる。そうして、永凛の首筋にがぶりと噛み付いた。
「いっ──!」
永凛は、痛みに呻き、清明にしがみつく。くらくらして、足元がふらついた。
「てめ、なにす……」
「これでおまえは、私の番いだ」
なにを言っているのだ、この男は。清明は、力を失った永凛を抱き上げる。永凛は、清明の腕の中で呻いた。
「くっそ……これが精霊の力とかか」
「違うが?」
「じゃあ、なんだよ」
「抗えない運命だ」
だから、何を言っているのだ──。永凛は清明に抱かれ、脱衣所に連れて行かれた。女中たちがいたので、慌てて前を隠す。清明が馬鹿にしたように言った。
「隠すほどのものでもないだろう」
「うっせえ」
「口は悪いが構うな。着替えさせたら私の部屋に」
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