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「マーキングをされたのか」
「そんな……私たちを差し置いて、新しい者を番いにするなど!」
「そうです、大体、なぜそのように凡庸な者を」
「簡単な話、匂いだ」
清明は、永凛の髪に顔を埋めた。くん、と匂いを嗅ぎ、うっとりと言う。
「この匂い、凛映さまに似ている……」
よく言うな、と永凛は思った。臭いとか言っていたのはどこのどいつなのだ。というか、この男はどれだけ緋凛映が好きなのだ。清明の様子を見て、愛人たちはわなわな震えている。
「そんな抽象的な……」
「納得できません!」
「我らはどうなるのですか」
「別に追い出そうとは言っていない。不満なら新しい番いを探せ。おまえたちにはマーキングをしていない」
「そんな! 私たちを捨てるのですか」
何を自分たちだけで盛り上がっているのだ、こいつらは。
「おい」
永凛の声に、清明が視線を向けてくる。
「どうした、私の番い」
「どうしたじゃねーよ。俺はおまえの愛人なんざなりたくないっつってんじゃん」
「なりたいかどうかではない。おまえはもう私のものだ」
人の話を聞かねえな、こいつ。永凛はそう思う。金持ちはみんなこうなのか。
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