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「性行為をした上でアルファが首筋に噛み付くと、番いとなる。マーキングとも呼ばれている」
マーキングはアルファの意思で行える、と清明は言う。
「その、ツガイとやらを解消する方法は」
「片方が死ぬことだ」
そうつぶやくと、清明の瞳が陰った。「リンエイさまが亡くなったため、私は18年、番いを持たなかった」
って、待てよ。死ぬまで解けないだと?
「そんなクソみたいな制約を勝手に課すな! そんなもん、呪いじゃねえか!」
「何が不満だ。番いがいれば、おまえは雄を調達しなくて済む」
「調達ってなんだ。いらねえし、そもそも」
清明が薄く笑う。
「……なんだその笑顔は」
「おまえはまだ、オメガというのがどういうものか、わかっていないな」
「は?」
「まあいい。私は仕事がある。夕飯には戻るから部屋にいろ」
そうして、愛人たちに視線を送る。その目の冷たさに、凛映はゾッとした。
「おまえたちは好きにしろ」
「そんな……っ、清明さま!」
清明が仕事とやらに行ってしまい、部屋には愛人たちと永凛だけが残された。まさに針のむしろ状態である。
(こんなとこに置いてくんじゃねえよ!)
番いの一人が、目を細めて永凛を見る。
「おまえ、どこの生まれだ」
「どこって、貧民街だけど」
「貧民街! 笑えるな」
青年たちが嘲笑う。
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