小瓶

1/10
前へ
/167ページ
次へ

小瓶

 ぐったりした顔で、永凛はつぶやく。 「……だりぃ」 「だろうな」  と清明。だろうな、じゃないだろう。誰のせいだと思っているんだ。  永凛は、清明の部屋にある寝台に寝かされていた。清明に出会って以来、あり得ないことが多すぎる。1日に3回も犯されるなんて、清明はしれっとした顔で、 「無駄な時間を浪費した。私は仕事に行く」  永凛は、疲れた顔で清明を見る。 「おまえさ、あいつらを追い払うために俺を利用しただろ」 「なんの話だ?」 「……とぼけんなよ、うぜぇ」  清明はふ、と笑い、永凛の頭を撫でた。 「よく休め、私の番い」  もう争う気力もない。言われるまま、永凛は目を閉じた。  次に目覚めると、清明はすでにいなかった。永凛は、ひどく腹が空いているのに気づく。なんか食いたいな、家探しに行こうか。そんなことを思っていた、戸を叩く音がした。返事をすると、開いた戸から、男がひょい、と顔を出す。 「お、ほんとにいた」 「あんた……」  燕蒼華がよお、と手を挙げ、部屋に入ってくる。彼は卓にどかりと腰を下ろし、 「びっくりしたよ。清明のやつが、おめえを連れて帰ってきたとか言うから」  永凛の顔を覗きこんだ。     
/167ページ

最初のコメントを投稿しよう!

549人が本棚に入れています
本棚に追加