マジカルステッキ

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マジカルステッキ

「ねぇパパ、これ入れて!」 ほのかは家に帰ると早速一枚の写真を渡してきた。この写真はアイドルグループBLC64の田辺繭香のものである。どうやらこの田辺繭香の写真を今日買った写真立てに飾りたいようだ。 田辺繭香はほのかの好きなアニメ「マジカルピアニスト ソラミ」のオープニング曲を歌っているアイドル。BLC64の中でも爆発的な人気を誇り、握手会ではいつも長蛇の列ができる。 「よし、分かった」 私はそう言うと、写真立てに写真を入れ、タンスの上に置いた。 「ありがとう」 ほのかが笑顔で言う。私はこの笑顔に何度癒されたことか。 テレビでは今週の「マジカルピアニスト ソラミ」が始まっている。ほのかはオープニング曲に合わせてマジカルステッキを振りながら踊るのが大好きだ。ステッキは先端がキラキラしている。当然あの店で買った物だ。今日もほのかは上機嫌で踊っている。しかし今日はいつにも増してダイナミックだなぁ…… 「あっ!」 ほのかの右手からスルリとマジカルステッキが滑り、タンスに直撃した。ステッキの先端に飾られていたキラキラした部分が勢いよくタンスに激突した結果、破片がバラバラになり床に散らばってしまった。 「う、うわぁぁぁぁーん」 散らばった破片を見てほのかが大声で泣き出した。 葵がほのかの鳴き声を聞きつけて走ってきた。 「ほのか、怪我はない?」 ほのかは泣きじゃくりながら葵の問いかけに頷いた。 「よかった」 葵はしゃがんで、笑顔で泣きじゃくるほのかの頭を撫でた。 「ステッキはまたパパのおこづかいで買って貰えばいいんだから、泣かないの」 葵の言葉にドキッとした。また私のお小遣いが飛んで行く…… そんな私の心配をよそに葵は 「さ、ソラミが終わっちゃうわよ。一緒に見ましょう!そして終わったらみんなでステッキのお片づけするわよ」 と、ほのかをテレビの前に促した。 「うん」 まだ目が赤いほのかだったが、葵の言葉のおかげで気を取り直し、テレビへと向かった。 私は次のお小遣い日までの日数を頭の中で数え始めた。
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