偽りの楽園

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偽りの楽園

「そこで何をしている」  夜も明けぬ暗がりの中。  “キング”が住まうという施設に忍び込んだ俺はやっとの事で檻を掻い潜り、餌場に手を伸ばした瞬間。澄んだバリトンの声がそれを叱責した。 「あ……」  俺はその声に背筋から血の気がサーっと引いていくのを感じ、しばし硬直すると、少年は壊れた人形の様にぎこちない仕草で振り返った。  するとそこには、縦長の窓から差し込む月明かりに爛々と光る二つ瞳が、仰臥したまま身体を横にして、頬に手を当てた状態で俺を見ていた。 「お前、ここで一体何をしている? ここが何処だと思っている」  その尋ねる言葉にさっきの叱責の硬い空気は無く、今度は逆に気だるげな雰囲気を感じた。  しかし俺は瞬時に地に伏すと、平謝りする。 「す、すみません! 冬の寒さに耐えかねて、近くにあったここについ……! それにキングの食べ物ってどんな味なのかなんか、すごく興味が湧いてしまって!」  俺は瞳をギュッと瞑り、額を地面に擦りつけてキングの反応を待った。     
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