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「いいか?ポテ」
俺はしゃがみ、ポテを目の前に座らせた。ポテは舌を出して俺を見上げている。
「今日からお前は藤間ポテであり、坂本ポテでもあるんだぞ?」
ポテのハァハァという息づかいが聞こえる。きっと理解してくれているに違いない。
「何やってんだ、おまえは」
ダンボールを持っている満が呆れた顔で俺に声をかけた。
今日は引っ越しの日なのだ。
家の中はダンボールだらけ。
「今日は寝室とポテの寝床は作るんだからな」
「はいはい」
俺は立ち上がった。
ポテも後ろから付いてきた。
満と共同名義でマンションを買ってしまった。
満は無事に会社を辞めた。
未練などはないようだ。
新しく立ち上げる会社に早く取り掛かりたいのだろう。もの凄いペースで部屋を片付けている。
しかし俺は満と一緒に退職というわけにはいかず、もう少しだけ会社に残る。
すでに辞表は出しているため、後輩の山田からは愚痴られ、満との関係もすっかり怪しまれている。
別にバラしてもいいのだが、できれば退職したあとがいい……。
「おい、広信」
「ん?」
名前を呼ばれ振り返ると満が目の前にいた。
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