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「とりあえずさ」
奏音が慌てた様子でスマホを取り出している。
「りんちゃん呼ぼうよ。りんちゃんがいなかったらループは起こらないんでしょ? そしたらさ、ほんとに今度こそみんな死んじゃうかもしれない」
「その必要はありません」
電話をかけようとする奏音の手を、メイナがそっと押さえた。
「どうして」
奏音が涙目でメイナを見つめる。
「事件が起こるのであれば、覚張さんが来るはずです。来ないということは、まだ何も起きないということです。違いますか?」
諭すようなメイナの語り口に落ち着いたのか、奏音がスマホを持った手を下ろした。
「そうだね。ちょっと慌てすぎちゃった」
奏音がえへ、と笑った。
「そういえば留、遅くない?」
俺は何気なく階段の上を見る。
「なにしてるんだろう」
「土岐亘、今日は聞こえないのですか?」
「なにも、分からない」
俺は、苦笑いで答えた。
「ずっと真っ白なんだ。留の頭の中」
その時、メイナと奏音の後ろに、二つの人影が見えた。
「おはようございますみなさん」
「お、おはよう。大丈夫?」
結里とりんが、息を切らして立っていた。
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