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「わあっ」
彼女はすぐそこにいた。
教室から横に一歩分離れたところだ。
つまり、扉の横の壁にぴたりと背中をつけて立っていた。
あまりにも動かないから、一回彼女の目の前を素通りしてしまった。
「何してるの」
声をかけると、彼女は、たった今俺の存在に気付いたように、びくりと肩を震わせた。
「私、どこに行けばわかりません」
「は?」
「私は今日転校してきたばかりなんです」
「どういうこと?」
「察しが悪いですね」
彼女が俺をにらんだ。
「だから、この学校の中で、二人きりで話せる場所が分からないと言ってるんです!」
よく通る声で語気を荒げるものだから、周囲の視線が俺たちに突き刺さる。
「分かった、分かったから。落ち着いて。みんな見てるし」
彼女は周りを見渡した。自分たちが注目されていることに気が付いたらしい。
すみませんと口の中で言って、俯いてしまった。
これ以上好奇の目に耐えられる気がしない。
「とりあえず、行こうか」
俺が提案すると、彼女は顔を上げた。
口は真一文字に引かれていたが、やっぱり綺麗な顔だなと俺は思った。
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