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「何がそんなに不安なのか分からないけど、何も起こっていないうちからそんなんじゃ、絶対解決できないわよ。大丈夫。きっとわたしたちならやれるわ。だって、五人もいるじゃない」
結里が一人ひとりと目を合わせていく。
「相手にするのだって凶悪犯罪者じゃなくて、ただの高校生でしょ? びびってどうすんのよ。行くわよ」
結里が地面と平行に腕を出した。手のひらは下を向いている。
「何ですか、それ」
メイナが首を傾げて尋ねると、結里は真っ赤になった。
「円陣よ。やったことないの? 皆で手を重ねて『おー!』って言うやつ。ちょっとやってみたかったのよ……」
「ふふ、結里先輩かわいい」
「ちょっ! うるさいわね。この中ではわたしが一番年上なのよ! お姉さんよ!」
奏音が笑えば、結里が怒る。一気に和やかなムードになった。
「何でみんな笑ってるのよ! いいからやるわよ」
結里が催促する。俺が手を伸ばすと、その上に奏音、りん、メイナの順で重なった。
「ファイトー」
「おー!」
結里が掛け声をかけ、みんなで手を真上に伸ばす。
そのまま見上げると、雲一つない真っ青な空が広がっていた。
「なんかさ、こんな時に不謹慎かもしれないけど、青春って感じでいいな」
俺が言うと、なにそれ、とみんなが笑った。
俺は伸ばしたままの手の平をぐっと握りこんだ。
ずっと平和が続けばいい。いや、平和にするんだ、俺たちが。
「行こう」
みんなが頷いた。俺は玄関の扉を開いた。
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