未来は必然

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「みなさんは私と、そして留さんのために、能力を使うことになっていただけなのです」 「能力?」  留が目を細めた。 「ええ。留さん、貴方も持っているはずです。三浦さんから聞きました。時が止まることがあるのでしょう? 一人ひとり能力を持っているのです。何のために生きるのかということがそれに関わっています」 「はあ」  留は気の抜けた返事をしている。 「それで。二学期になってあんたたちが急に仲良くなったのと、どう関係あるわけ?」  調子を取り戻した留を見て、俺はほっと胸をなでおろした。  素直な留は、可愛くはあったが、やはり少し落ち着かなかった。  問いに答えようとメイナが口を開いた時、階下から母さんの声が聞こえてきた。 「亘、留、いるの? 遅刻よ! 急ぎなさい!」 「やべっ」  時計を見ると、遅刻ぎりぎりの時間だった。 「思ったよりは時間が経ってないようだけど……」  結里がちらりと留を見るが、留はそれには気付いていない。 「急ぐぞ!」  鞄を掴み、いの一番に飛び出していった。  ふふ、と笑い声が漏れる。  女子たちの視線が俺に集まった。一様に、変なものを見たという顔をしている。 「俺たちも行こうか」  取り繕うように言うと、全員が頷いた。  俺は留の後を追って走り出す。体は驚くほど軽かった。
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