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「わたしも、能力だって分かってほっとしたわ。そしてそう自覚したら、必要な情報とそうでない情報が分かるようになったり、事件が起こる前に駆けつけられるようになった。そのおかげで爆破事件も未然に防げたわけだしね。これは本当に、メイナちゃんと出会わなかったら無理だったこと。今後は、この能力があるのはなぜなのか考えて、生き方を決めるわ。あと、メイナちゃんと会わなかったら絶対に一つ下の子たちとは仲良くなれなかった。機会を作ってくれてありがとう。……最後はワタルくん。びしっと決めて頂戴」
結里が俺に向かって親指を立てた。
「えー、ご紹介にあずかりました、土岐亘です」
俺は緊張して頭を掻いている、と言うポーズでそろそろとその場に起立した。
「そういうのはいいから」
ちょっとボケてみただけなのに、留から鋭いツッコミが入る。
「では、本題です。メイナが転校してきてからの一か月間、色んなことがありました。……あー。なんか照れるな、これ」
照れ笑いをしてみるが、みんな真剣な顔つきでこちらを見ていて、茶化せそうな雰囲気はない。
俺は覚悟を決めた。
「メイナ。今までありがとう。俺が大人になった頃には、メイナもギリギリ生きてるだろうから、また会えるよな? 遊びに来てくれよ。メイナが事件を解決して、平和になった世界を見にこい。お前が変えたんだ。お前が世界を救ったんだ。また会おう! 以上」
俺は言い切る前に素早く座り、飲み物をストローで勢いよくすすった。
顔が熱かった。きっと赤くなってしまっている。
ずずっという音が聞こえ、いいスピーチが台無しだ、と留が笑った。
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