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「ギリギリとは失礼ですね。私の方が未来から来たのですから、しっかり生きていますよ。むしろ貴方が頑張って生きててくださいね」
言葉とは裏腹に、声には覇気がない。
メイナを見ると、左目からぽとりと涙が落ちて、テーブルの上で跳ねた。
「大丈夫?」
結里がレースのついたハンカチを取り出し、メイナに差し出す。
メイナはそれを受け取り、目頭を押さえた。
「すみません。留さんにはあんなことを言っておいて、私は自分の価値を低く見積もっていました。事件を解決するという目的で来たはずが、思いがけずみなさんに色々もたらしていたのですね」
「メイナは、俺たちに『能力』を教えるために来たのかもな」
何気ない言葉だったが、メイナははっとした顔をした。
そしてそれからゆっくりと笑顔になった。
「そうかもしれませんね。……そうだといいですね」
自分に言い聞かせるように、言った。
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