出会いは突然

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「どうしたのですか? 観察させていただけるのでしょう」 「いや、そうなんだけど、初めて会った女の子と二人で帰るのはちょっと……」 「何が問題なのですか?」  ずいっとメイナの顔が近づいて来て、俺は慌てて顔を背けた。 「噂になる、というか」 「噂ですか? どんな」 「ほら、あの、つ、付き合ってる、とか」 「はあ」  メイナが大きなため息をついた。 「そんな誤解、されるわけないじゃないですか」 「いや、でも、現にさっき、メイナに呼び出されたわけだし。告白、とかされて付き合ったって思われても仕方ないというか……」 「土岐亘の脳内では、『男女が二人で話す』という行為が『告白』に結び付くわけですか。分かりました。ずばりあなたは、妄想力豊かな童貞ですね」 「なっ……」  俺は言葉を振り絞った。 「初対面の男相手に言う言葉じゃねえだろ」 「思ったことを言ったまでです」  間髪入れずに答えるすまし顔のメイナを見ていると、無性に腹が立った。  こうなったら噂になってやる。  俺は、転校生から初日に呼び出しを受けてカップルになった人間として、一日にして英雄になるだろう。  損はない。まあまあ綺麗、だし。  ただメイナは、童貞だと思っている相手に自分から告白したことになる。屈辱だろうな。  メイナに恥をかかせてやる。  俺はにいっと口角を引き上げた。  きょとんとしているメイナに向かって、言った。 「気が変わった。一緒に帰ろうぜ」
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