プロローグ

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 少女はもちろん事件の概要は知っていたはずだった。  死傷者数、建物への被害、復興のための資金。  しかし、被害は数字だけでは測れないということを、今の瞬間に悟っていた。  悲惨さは、目の前で起こってみないと気づけないのだ。  少女は唇をかみしめた。  そして、自分の役目を理解した。 「私はこの事件を防ぐために、タイムスリップの能力を持って生まれてきた。そうに違いない」  涙が左目から滑り落ちた。  少女は現場に背を向けると、再び元の世界へと戻っていった。 「とき、わたる」  この世界に小さな呟きを残して。
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