34人が本棚に入れています
本棚に追加
夏休み明けの今日、ホームルーム前の教室はどこか浮き足立っていた。
「転校生来るんだってさ。知ってた?」
「え、女子? 男子?」
「女子!」
「うちのクラス?」
「そうそう」
誰がどこから情報を得てきたのか、転校生の話で持ちきりだった。
「おーい、お前ら席に着けー」
担任が入ってきて、みんなばたばたと席に戻っていく。
俺はそんな様子を、片肘をついて眺めていた。
ちなみに担任は、柔道部顧問のゴリラみたいなマッチョの男だ。
担任の後から着いて教室に入ってきたのは、噂通り女の子だった。
俯いていてあまり顔が見えない。
暗くて大人しそう。そんな印象だ。
「今日からこのクラスのメンバーになった、天翔メイナさんだ。みんな仲良くしてやってくれ」
自己紹介して、と言われて一歩前に出た転校生。
「初めまして、天翔です。よろしくお願いします」
予想外だ。凛としたよく通る声。
俺はあんぐりと口を開けて、転校生を見つめた。
こちらを見た担任がからかうように言った。
「お、なんだ土岐。一目惚れか?」
「いや、あの、案外ハキハキ喋れるんだなと思って……」
ネクラだと思ったのに、とは口が裂けても言えない。
最初のコメントを投稿しよう!