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「すいません」新米の藤吉がおずおずと手を挙げた。
「僕が聞いた高齢者の方の夢、というか願いなんですけど、亡くなったおばあさんと話しがしたいっていうのはさすがに無理ですよね?」
「出来なくはないが国際的には非合法だ。やるとなると法外な費用が必要になるし、夢が叶ったころにはこの国が財政破綻してしまう」
藤吉はすぐさま手を引っ込めた。
藤吉と同期の熱血漢、朝日が手を挙げ「宇宙人に会いたいというのも無理でしょうか?」と聞いた。
「宇宙人はなぁ、無理だな」
「無理ですね」
神宮寺の言葉に、高田も同時に声を上げた。
「お言葉ですが、出来そうもないことを叶えるのがここの仕事ではないのですか?」
朝日がなおも食い下がる。
「会いたいというのなら活きのいいやつを1匹連れて行ってもいいんだ。公安に一生監視される人生を送ることになっても構わないのならな」
朝日は納得いかないのか、まだ何か言いたげだった。
「紅白に出たい。これはどうですか?」
場の空気を察したか、遠藤がとりあえずといった形で提案をしてくる。
「その夢ならおととしも叶えたはずだ。実現は簡単だが不自然さが残るから当分は控えたいな。視聴者の目をごまかすのもそろそろ限界だ」
「そういえばあたしが前に言ってた、ピアノが弾けるようになりたい、というのはどうなったの?」と矢沢が言う。
「ピアノ?知らんな。楽器か?」
高田が口をはさんだ。
「その件なら調べてみたところ相当古い時代の楽器だそうで、現存しているかどうかも分からないそうです」
「入手が難しいとなると厄介だな。弾き方が分かる人も探さないといかん」
「不安要素ばかり考えていたら決まるものも決まらないわよ」
矢沢の言葉に朝日も「そうですよ!」と同調する。
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