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幽霊公園
市内のとある公園には幽霊が出るという噂がある。
だから近づく者もほとんどいないが、たまたま足を踏み入れて、幽霊を目撃してしまったという話を何人もの人から聞いた。
ただその話を聞いていて、色々不思議に思うことが多くあった。
幽霊を見たのは事実のようだが、出くわしたという幽霊の容貌が全員まったく違うのだ。
長い髪の女。痩せこけた男。男とも女とも判らない白髪の老人。やはり性別が判らない程小さな子供…それ以外にもまだ違う姿の幽霊がいたようだが、不思議と誰も、二体以上の幽霊を同時に見てはいないという。
一つの公園にそうまで大量の幽霊がいるというのも恐ろしい話だが、その怖さよりも、幽霊が同時に出てこない状況の不思議さに俺は好奇心を抱いた。
とんでもないことになる可能性を承知で、数日後、俺は件の公園に足を踏み入れた。
拍子抜けする程公園は普通だった。
幽霊の噂が立ち、人など近づきもしない筈なのに、いかにも散歩に来た様子の親子連れ、外回りの途中に、ちょっと休憩に立ち寄った感じのサラリーマン、たむろして井戸端会議に花を咲かすお年寄りなど、色んなタイプの人で賑わっている。
あんなに色んな人から話を聞いたのに、幽霊の噂はデマだったのか。
拍子抜けして近くのベンチに座り込み、しよせん噂は噂かと思っていた時、ふとあることに気がついた。
公園にいる人達総ての見た目になんとなく覚えがある。でもどこで見たのか判らない。
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