あの香りの正体

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自習学習のために、学校に残ってたらもうすっかり日も暮れて真っ暗になっていた午後6時半。 夏の暑さも去り何か寂しさを感じるようになったが金木犀が咲いていて香りがどこか懐かしい感じもする。 自転車に乗って校門を出たらすぐのところにあの子はいた。 特に接点も無く話した事も一言や二言くらい、接点といえば同じクラスで隣の席くらいだろうか。 だけど、僕はあの子に一目惚れしていた。 竹を割ったような性格、スラっとした姿、ショートヘア... 見た目も中身も全て僕の好みだった けど声をかける勇気もないしこの気持ちのまま卒業していくんだろう。 それを友人に話したら「根性無し」って言われたがそれはそれで仕方ない。僕はそういう男だ。 今日は何故か声をかけようとしたけど、今日のあの子はいつもと違うかった。 今日のあの子は泣いていた。 自転車を漕ぎながら考えた。 あの子はなぜ泣いていたのだろう。 友達とケンカをしたのか? 好きな人に振られたのか? テストでいい点取れなかったのか? 先生に怒鳴られたのか? 冷たい風が自転車を漕ぐ僕の頬をかすめる。冬が近づいていることに気づかないくらい僕の頭はその事でいっぱいだった。
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