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だけど、次の日もその次の日もあの子は普通に過ごしていた。
僕は何か見間違えたのだろう。
あんなに考えたのが馬鹿らしく思えた。
ただ一つ何か違うと思ったのはあの子からは金木犀の香りがした。
きっと窓が開いていたのだろう。
金木犀がちょうど満開だからだろう。
僕はそう言い聞かせてこの事は考えることをやめた。
マフラーなしでは過ごせなくなった頃には僕は受験シーズン真っ最中だった。
あの子はどこに行くのだろう。
聞けば済む話だけど、それすらも聞けなかった。
しかしあの子は受験勉強を一切してなかった。
就職でもするのだろうか。それとももう大学に受かったのだろうか。
きっともう卒業したら会えないんだな...
隣の席見ると、あの子はずっと外を見ていた。
相変わらず甘い金木犀の香りがした。
2月になると卒業式まで学校に来ることはない。無事大学も合格し部活にちょくちょく顔を出すようになった。
少し懐かしくなって教室を覗くとあの頃の風景を思い出す。
人がいた気配がした。
教室を見回したけど誰も居なかった。
気のせいか...
入って自分の席に座ってみた。
目をつぶってみるともうあの頃には戻れないんだと心が苦しくなった。
誰もいない教室には甘い金木犀の香りが充満していた。
なんでだろう...
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