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白くなりつつある空に向かって大きく伸びをすると、男は満面の笑みを浮かべ、恭しく老婆に頭を下げた。
「占い師さん、本当にありがとうございました。世の中に疲れて死ぬことばかり考えていた私を救い、夢を叶えるための道を示してくださったのは他でもないあなたです」
「きっかけなんてなんだっていいさ。大切なのは、夢の叶え方を知ったあんたが動くかどうか。ほら、こんな小汚い占い師にばかり話してないで、そろそろ悪魔を呼び出してきたらどうだい。あんたのその苦労をつまびらかに話し、夢を伝えるべき存在はそっちだろう?」
占い師の問いかけに、男は強くうなずく。
「ええ、そうですね。私はここで失礼します。本当にありがとうございました」
「あぁ、その前に」
立ち去ろうとする男を呼び止め、占い師は最後の質問をぶつける。
「あんたは、悪魔に何を願うんだい? もう一度、あたしに教えてくれないかい?」
男は、屈託ない笑顔を見せて答えた。
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