Never give Up!

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Never give Up!

   湾岸道路を西に向って走っていた。  乾いたエンジン音を、もう何時間も聞いている。ロードノイズがやたら耳につく。  車内ミュージックは必要なかった。今となっては、どんな曲も胸には響かないし、脳には届かないと知っているからだ。  フロントガラスの向こうには、鈍色の空。そして遠くに泰然した山系が見えている。  あの山の高原は別荘地として有名であり、恋人の由美子が終末ケアをしているホスピスがある場所だった。  僕はそこに向かっている。  由美子の余命はもう長くはない。    さっきから、流れ行く雲間に見え隠れする鳶を気にしていた。つがいと思われる二匹は、上空から下降すると、防砂林の向こう側に消えてしまった。    ──生涯の最後は、せめて愛する人と一緒に居たい──    そんな思いが、僕を突き動かしている。ただし今となっては、由美子の為だけを思った行動とはならないだろう。何故ならば、地球最後の日がいよいよ明日となった今、僕にだって同じ事が言えるはずだからだ。    おもむろに缶コーヒーを口へと運んだ。一時間も前のものだから、もうとっくに冷めていて、香りも何もあったものじゃなかった。     
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