【初夜】

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「我の注ぐ愛が、トヨホギにどんな変化を与えているのかを、肌身で感じたいのだ。激しく愛しあう夫婦は、妻が夫の背に愛の証を刻むそうだよ。そして夫は、妻の奥深くに自らの欠片を放ち、子どもを授かる。……トヨホギの愛の証を、我が背にもつけてほしいな」  ホスセリはトヨホギの手を、自分の肩に乗せた。トヨホギは羞恥をこらえるために、下唇を噛みつつ、ホスセリの首に腕を回す。 「トヨホギ」  褒めるように、ホスセリが唇を寄せてきた。トヨホギは愛されている実感に胸を震わせ、受け止める。 「ん……、ふ、んぅ、う」  ホスセリの舌にあやされるまま、トヨホギは口内に生まれる甘い疼きを受け止めた。それは喉を通って心を震わせ、肌にさざなみを起こした。角度を変えながら、ホスセリは舌がだるくなるほど丁寧に、たっぷりと時間をかけてトヨホギの口腔から快楽を引き出す。 「ふ、んぅ、う……うう」  応える術など知らぬトヨホギが、おずおずと舌を動かすと、ホスセリはうれしそうに目を細めた。それに励まされ、トヨホギは舌を伸ばす。すると舌先を甘く吸われた。 「んふっ、うう――っ!」  舌先で生まれた快感が、トヨホギの下肢を震わせる。そんなふうに官能が走りぬけるとは思わず、トヨホギは目を丸くした。 「驚かなくてもいい。トヨホギ」  ホスセリは、トヨホギの肌の震えから、彼女の驚きの理由を察した。 「もう一度、舌を伸ばして」  トヨホギは迷った。先ほどの、痺れるような感覚が恐ろしい。     
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