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互いに、おなじ感慨の吐息を胸中で零したふたりは、静かにほほえみを交わした。
「すっかり、大人の女性になってしまったな。トヨホギ」
「ホスセリこそ。こんなに男らしくなって帰ってくるなんて、思いもしなかったわ」
言葉を交わせば、離れていた時間を飛び超えて、なつかしくも馴染み深い間柄に戻る。ホスセリは寝台に腰かけ、革靴を脱いで胡坐をかいた。
「こんなふうに、性急に婚儀の運びとなってしまい、すまなかった。本来なら、披露目の宴をし、そなたともども豪族の皆に挨拶をしてから、こうして夜を迎えるべきなのだが」
ホスセリが顔を曇らせる。心底、申し訳ないと告げるホスセリに、トヨホギは首を振った。
「いいえ、ホスセリ。私は気にしてないわ。改めて挨拶をしなくても、エミナの民は私とホスセリが夫婦になることを知っているもの。私たちは、生まれたときからこうなるって、決まっているんだから」
トヨホギは穏やかに、ホスセリの膝の上の手に、右手を重ねた。
「それに、一刻も早くあなたが国王として、立たなければならないのでしょう?」
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