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「ああ――。戦はこちらの勝利で終わったが、戦で疲弊した国土を盛り立てるには、王がいないとどうにもならないからね。ホノツオジ皇子が次の大君になられる祭典に、国王が出席しないとなると、政に不利になる」
やれやれと重い息を吐き出すホスセリの手を、トヨホギは強く握った。
「お父様のことは……」
「ああ。勇敢に戦って、亡くなられたのだ。ホノツオジ皇子を、文字通り命を張ってお救いになられた。そのおかげで、ここエミナは他国からも一目置かれる存在となった上に、ホノツオジ皇子からの覚えもめでたい。国のために、王として最大の功労をなされたと、父を誇りに思っているよ」
さみしげにホスセリが笑う。トヨホギの胸が、ぎゅっと悲しみに掴まれた。
「ホスセリ」
左手で、ホスセリの頬に触れる。
「泣かないの?」
「嘆く必要は、どこにもないだろう。父は立派に、国王としての役目を果たしたのだから」
「ただの息子として、お父様が亡くなられた事を受け止めないの?」
トヨホギの言葉に、ホスセリの瞳が揺れた。
「ここは、私とホスセリだけだわ。ホスセリがどれほどお父様を尊敬し、慕っていたのかを、私はようく知っているから。……だから、ホスセリが泣かないなんて、すごく不思議なの。ねえ、ホスセリ。ただのホスセリとして、どう感じているの?」
「トヨホギ」
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