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さっき別れ際にもらったスイレンの苗を大事にポケットにしまい、鼻をうごめかせ、耳を澄ます。
足元のガス灯の具合、機関車の匂いから、19世紀初頭。
聞こえる言葉は英語圏だけど、世界が少し違うかな?
微妙な言葉の違いを耳が感じとる。
少ない人通りに、それでも目立たない様な装いに服を変える。
ガス灯を蹴って路地裏に一旦身を移してから、何事もないふりで通りに出た。
灯りの届かない場所ですれ違った裕福そうな男から財布を抜き取る。
そろそろ指紋認証システムが警察に導入されているかもしれない時期だし、革の手袋は装着済み。
手早く金だけ抜き取って、後は分かりやすい所に捨てた。
夜間だというのにワゴンを出している、商売熱心なオヤジからフィッシュ&チップスを買う。
うん、なかなか。
ちょっとだけ腹を満たして、たまたま目に付いた高い教会に向かう。
途中、柄の悪い男達に絡まれた、これまた裕福そうな男がいたので、興味がわいた。
なんというか、さっき財布をスった男とは違う、もっと高級な匂い。
オレは契約者を選ぶ時、そういう相手を探す事が多い。
暗殺稼業より、護衛任務の方が好きだし、身分の高い人間は狙われてる事が多いから、相手もオレを必要としてくれるからだ。
まぁ、後世に行くほど身分とか関係なくなるんだけど。
契約者が見付からなければ、二週間程で魔法転移が勝手に発動する。契約中は魔法転移は発動しないのだ。
正直、行った先の世界観やら言葉を覚えるのが大変で、あまり動きたくない。
だから、出来るだけ早い内に、契約者を捕まえたい。
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