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キョトンと首を傾げるクロエ。
「今は屋敷で私の下着を洗濯なさってるんじゃないでしょうか?」
「うちの兄貴に何させとんじゃわれぇえぇぇぇ!!!」
「静かにしてください海斗さん。授業中ですわよ。」
気がつけば、俺はクロエとの会話に気がそれて授業を全く聞いていなかった。
始まっている事すら気がつかなかった。
「それに、貴方のお兄様は喜んで私の下着を洗っておりましたわよ?」
あぁ、死にたい。
身内の恥を敵の大将から聞く事になるとは...。
「今すぐお前の屋敷にいる兄貴をぶちのめしたいのは置いといて、まずそもそもなんで兄貴はお前の屋敷で働いているんだ?」
万が一にも、兄が脅されてクロエの家の使用人をやっている可能性を信じたい。
その一心で質問をした。
「頼んでも無いですけど、勝手に使用人やっておりますわよ?一応働いておりますので、給料は出させておりますけど。」
(死にたい...。今すぐここで死にたい。)
言葉が出なかった。
兄にかける言葉が出てこなかった。
認めたくはないが、兄貴は言い訳のしようがない変態であったのだと。
衝撃の真実を目の当たりにし、灰になっていたら下校の時間になっていた。
日は傾き、橙色の光が教室を 照らす。
いつのまにかクラスメイト達は俺と1名を除いて皆帰ってしまっていた。
その1名とは。
俺の隣の席で、現在小さな寝息をたてて気持ち良さそうに寝ている銀髪の髪の異世界人だった。
俺はこいつに両親を殺されて誰よりも憎いはずなのに、なぜかこいつの寝顔を見ているとその感情はどこか薄れていく感じがした。
もしかしたら、さっき言っていたミスト状にした惚れ薬のせいなのか...。
果たしてそんな効果はあるのかは分からないが、こんな所で寝て風邪でも引かれたら困る。
そう思ってしまった。
「おい、転校生。早く起きろ。起きないと置いて帰るぞ。」
置いていくつもりは無いが、一応言ってみる。
ラグはあったが、半目の状態で起き上がり、周りをキョロキョロしながら現状を確認し、2人っきりになってしまっている事にまだ、脳が追いついていないのか、ボーっとこちらを見つめて止まっていた。
もうすぐ春も終わり、夏がやってくる。
まだ寝ぼけているクロエに、軽くデコピンをした。
「さっさと帰るぞー。」
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