第1章 なんやかんやの高校生活

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その後、目が覚めた俺はベットにまたがり、泣き喚くクロエを蹴飛ばし退院した。 帰り際に医師からはなぜ意識があるのか、まともに喋る事が出来るのかそして、なぜ体を五体満足に動かせているのか分からないと言われ、一時はもう2度と意識は戻らないとまでクロエに伝えたそうだ。 それもそのはず。 俺はクロエの用意した手料理を食べた。 そして意識を失った。それすなわち、異世界の調味料を満遍なく使われたこの世界(人間界)には存在しない毒物を体に取り込んだのだ。 一般人がそれを一口頬張れば歯は溶け、口の中は炎症を起こし味覚は死に、食道から胃にかけてドロドロに溶けて気管も死ぬ。 ついでに、海苔の風味を再現したであろうあの香り.....あれは間違いなく細胞を壊し、脳に直接働きかける幻覚作用をもたらす麻薬に近い効果を発揮していた。 人間が食べて大丈夫な物が1つも含まれていない物を作り出す天才なのだクロエとか言う女は。 「びぇーん。ごめんねぇ、海斗ごめんねぇ。私すっかり忘れてた。私料理下手だった事すっかり忘れてたぁぁぁ。」 この手で危うく何回殺されかけた事か... 帰り道泣き止まないクロエを背に、俺もクロエの手料理が超ド級に下手だと言う事にすっかり忘れて食べてしまった事を後悔した。 (いや、そもそも俺は異世界からクロエが持ち込んできた調味料など諸々を捨てたはずなのに、なぜまたキッチンに戻ってきてるんだ...) 俺が意識を戻したのはおにぎりを頬張ってから1週間後、それは学校を6日休んだ事になっている。 (こんな調子で行くと出席日数.....足りるかな。) 季節は春。 まだ冬の寒さを感じる春の夜は、 頬を伝う冷たい雫を夜風が連れ去って行くのであった。 (高校2年生になって、まだ一度も学校に行けてない...(泣))
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