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サンジョバンニの朝
サンタクローチェ広場は、朝から観光客でごった返していた。
三田村翔也は時代行列を待つ人波に流されないよう、通りを進む。
ボクシングで鍛えた屈強な身体を持つ彼でも、これだけの人の群れをかき分けて進むのは容易ではない。
今日は六月二十四日――サンジョバンニの祝日。
時代行列、カルチョ・ストーリコ(古式サッカー)、花火。朝から晩まで続く様々な催しに、市民も観光客も一日中熱狂する。
特に今年の花火大会は地元の花火工房だけでなく、日本など海外の業者も参加するとあって注目を集めており、日本人観光客も目立っている。
翔也は西へと進み、トルタ通りに入る。噂話を頼りに、小さなカフェを探す。
そこにジュリオ・パゴットがいるという。
店はすぐに見つかった。
待っていてくれ、フィレンツェの暴れ花火さんよ、と翔也は強く念じながらドアをくぐる。はたして彼はそこにいた。
店内の一番奥のテーブルでひとり優雅に朝の一杯を楽しんでいる男。動画で何度も見た顔だ。
簡素な白のシャツと精緻なタトゥーに包まれた肉体は屈強の一言。五分に刈りそろえた頭髪、切れ長の大きな眼、厚めの唇。
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