サンジョバンニの朝

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鼻筋が少し右に曲がってさえいなければ、ミケランジェロの手による造形物かと思うほどに特徴的な容貌だ。見間違えるはずもない。 「……ジャポネーゼ、俺になんか用か?」 翔也の視線に気づいたジュリオが、たいていの日本人観光客なら震えあがって即座に逃げ出しそうなまなざしをむけた。 しかし、翔也は動じる素振りを見せず流暢なイタリア語で返した。 「日本で夢を見たんだ。今日はその夢を実現させに来た」 「夢だと? それが俺と何の関係がある?」 いぶかしげに問うジュリオに、翔也は右拳を前に突き出し、宣言した。 「俺の名は、翔也。三田村翔也だ。カルチョ・ストーリコの英雄、フィレンツェの暴れ花火をぶちのめしに来た男さ。覚えておいてくれ」 ジュリオは少しの間、あっけにとられた表情を浮かべたあと、不敵な笑みを浮かべた。 「おもしれえ、夕方が楽しみだ」     
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