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サンジョバンニの夕方
サンジョバンニの祝日に開催されるイベントのひとつにカルチョ・ストーリコの決勝戦がある。
別名を古式サッカー。
十五世紀から開催されているといわれる伝統あるスポーツだが、日本の蹴鞠のように上品なものではない。
一チーム二十七人、計五十四人の男たちが取っ組み合うという、球技どころか格闘技の枠すら超えた喧嘩のような競技なのだ。
翔也は、祖母がイタリア人でフィレンツェの生まれだったため、この競技のことは寝物語がわりに聞かされて育った。
これまでも興味はあったものの、自身も出てみたいと思うようになったのは五年前にボクサーを引退し家業を継ぐ決心をしてからだ。
今年、仕事で半年間イタリアに滞在することになったのを機に、親戚を頼って参加資格をとった。
ジュリオ・パゴットはカルチョ・ストーリコの大スター。
翔也は彼が縦横無尽に暴れまわる動画を見て感動に震えた。
どうせ出場するのならこの男をノックアウトしてみたい。
そう決めると、仕事の合間をみつけてはトレーニングを積んだ。
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