0人が本棚に入れています
本棚に追加
/3ページ
君が降る街
君が降る街
the134340th(ホシ)
ここは奇跡が降る街だ。
新しい命がうまれて、錆びついた鉄くずは、捨てられる。食べた後のものや、年老いたひとは、全て燃やされて再利用される。
新しくうまれたものは、それを食べることが許されている。
くだらない。
カーテンが中途半端にあいていたから、それをきっちり閉めるために、僕は立ち上がった。そのとき外は今、雨が降っているのだと、初めて気が付いた。
もしも晴れていたら、この奇跡が降る街に、三桁満点の答案用紙を渡してあげたい。
でも、今日は雨だ。残念ながら、三桁満点の答案用紙を渡してあげることは、できない。
しとしとと、まるで嗚咽を我慢しているかのような、そんな雨の声を聴いてみる。
この雨が、夢が、奇跡が、君が、全部僕に降り積もればいいのに。
どうして、僕には何もないんだろう。夢も、奇跡も、君も。どうして、何もなくしてしまったんだろう。
悲しいんじゃない。涙を流しているわけでもない。ただ、ただ、やるせない。
どれだけ明るい歌を歌ったって、この気持ちは晴れることはない。でも、悲しい歌を歌ったって、報わるわけでもない。
最初のコメントを投稿しよう!